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シェイクスピア&英国演劇 情報紹介サイト Shakespeare and British Theatre Information Site


作品・詩 Sonnets & Poems

-詩人という職業
-長編叙事詩
-ソネット(十四行詩)

詩人という職業_________________________________________

シェイクスピアは劇作家(playwright, dramatist)として有名ですが、同時に「詩人poet」とも呼ばれます。

この「詩人」ですが、日本では「抒情的・感傷的な詩作をする人」といったロマンチックなイメージが先走り、
具体的にどんな職業なのかを想像するのは難しいかもしれません。

西洋における「詩人」は、歴史的に、貴人や権力者の加護を受け「詩=Poetry を書く」人々のことも指しており、
シェイクスピアも、大枠ではこの分類に属していたと考えられます。「詩」とは、伝統的に、@叙事詩(英雄譚)、
A抒情詩(感情詩)、B戯曲(喜劇・悲劇)に分類されていて*、「戯曲」は「詩」のジャンルの一つ、故に劇作も
詩人の仕事の一つでした。また、基本的にここで言う「詩」とは、形の決まった韻文詩のことで、声に出して読まれ
(歌われ)ていたと認識しておくと、戯曲が詩の一部として同列に扱われることをイメージしやすいかもしれません。

*ギリシャの哲学者アリストテレスは、現存する著作の断片の中で、悲劇、叙事詩(英雄譚)、喜劇の3つを主な「詩」の分類として挙げ、それぞれのジャンルで、目的ごとに「あるべき最上の形式(言語・旋律等の使用法、主題のあり方、語り・会話などの表現の仕方等)」というものを定めています。現代でこそ、詩とは何か?美とは何か?詩の表現とは何か?について、様々な考え方が許されていますが、上記のアリストテレスの考え方は、ルネサンス以降、美学者たちに取り入れられ、長い間、西洋文学における「正統な」概念となっていました。

また、英国的な「詩人」をイメージするにあたり、ブリテン島には、もともと語り文化(Storytelling culture)がある
と言われていることを頭に入れておくとよさそうです。英雄譚や伝説、伝承、物語を、詩に仕立て上げ、弦楽器演奏に
合わせ歌う者は昔から存在しており、町から町へ渡り歩く大道詩人的なものも、王や貴人に仕えて主人の為に詩作を
するものをするものもいたようです。

*ノルマン以前のアングロ・サクソン文化ではScopやGleeman、ウェールズの中世ゲール文化ではBardやFiliと呼ばれる詩人たちが存在していたとされています。こと、ウェールズ地方における古来の宮廷詩人Filiの地位は非常に高かったようで、ウェールズの古い文化では、詩作が重要視されていたことが伺えます。ちなみにBardという語は、元々はFiliと対極の下層の雇われ詩人を意味していたそうですが、後に、高名な詩人をさす語となりました。また、芝居好きの君主たちを生んだチューダー王家が、元々はウェールズの出身であることも、想像を掻き立てる興味深い事実です。

こと、王侯貴族に雇われていた詩人たちは、いわば「宣伝部隊」のような役割も担っており、主人や主人の祖先、
一族の功績を称える歌(詩)を作って世に広めることが、重要な仕事の一つでした。中世期のMinstrelと呼ばれる
詩人たちが代表的なもので、楽師・詩人・歌い手・ラッパ吹き・大道芸人・小間使いと、上記の宣伝部隊、
時にはスパイもひっくるめたような役割を果たしていたと言われます。

やがて、南欧のオック地方で、Troubadourと呼ばれるいう、洗練された詩作や演奏をする詩人たちが誕生します。
これが、いわゆる騎士道精神や乙女崇拝などのテーマを歌う、ロマンチックな宮廷詩人のイメージの基となった者たち
ですが、以降、王侯貴族が闘争に明け暮れた時代から、政治力を駆使する駆け引きが主流となる時代に変わっていく
中で、次第にイングランドでも、貴族たちが抱えるのは、大道劇人的何でも屋詩人から、高度な詩作能力と知識を
駆使して物語を編み朗唱する、洗練された「宮廷詩人」的な者たちに変わっていった、と言われています。丁度、
リチャード2世の治世で、その新しい「宮廷詩人」の代表格が、チョーサーです。

シェイクスピアの時代でも、役者や詩人、楽師などが活動をするためには、貴人の加護を受ける必要がありましたが
シェイクスピアも駆け出しの頃には、加護を求め、ターゲットの貴族に詩を捧げています。それが、「ヴィーナスと
アドニス」及び「ルクレツィアの凌辱」の2編の長編叙事詩です。どちらも、若き美貌の貴族、サザンプトン伯爵
ヘンリー・ローズリーに捧げられたもの。また、ソネットと呼ばれる定型詩が154編残されています。これも
誰かに捧げられたもの、ではありますが、贈られた相手は謎のままで、現在でも熱い議論の種になっています。

長編叙事詩___________________________________________
ヴィーナスとアドニス

シェイクスピアの出世作。ローマの詩人、オウィディウスの作品中の物語を基に書かれた。1593年に出版。
シェイクスピア最初の出版物とされている。ただし、シェイクスピアの芝居はそれまでに幾つか上演されており、
すでに劇作家としては世に認識されていた可能性が高い。丁度、疫病が流行し、劇場が閉鎖されていた時期に、
収入を断たれたシェイクスピアがパトロンからの援助を求めるべく執筆したとも考えられている。詩集の最初に、
パトロン、サザンプトン伯に捧げる言葉が綴られている。

ルクレツィアの凌辱

「貞淑なルクレツィア」の伝承を基にした作品。詩集は1594年に出版され、前作と同様にサザンプトン伯に捧げる
言葉から始まっているが、その語は、前作以上に情熱的で親しみを込めた表現となっている:
「The love I dedicate to your Lordship is without end 私が御前様に捧げる愛に終わりはございませぬ」


ソネット(十四行詩)______________________________________

Sonnets ソネット(十四行詩)は、イタリア発祥の定型詩。16世紀初頭に英国に伝えられ、エリザベス一世時代に流行した。通常は、恋人や美しい女性への想いを綴った、甘美で(時に誇大に)ロマンチックな内容であることが多い。

「シェイクスピアのソネット」は、1609年に発売された全154編からなる詩集。制作年代は定かではなく、出版の
10年前にはその存在が確認されている。長編叙事詩出版時のように、疫病の流行で劇場が長期閉鎖されていた時期と
重なることから、金銭的な理由によるものと推測されてはいるが、1609年に出版された理由も定かではない。

内容も謎に満ちている。全154編のうち、126編は「美しい若者(男性)the Fair Youth」への想いを綴ったもので
ごく同性愛的、残りの28編は、詩人の「愛人らしき女性the Dark Lady」への想いを綴ったものだが、女性への
性的欲望とその欲望への嫌悪が驚くほど率直に表現されている。

さらに、詩人とこの二人の複雑な関係が示唆されるなど、中々衝撃的な内容となっている。 Fair YouthやDark Ladyが
架空の登場人物なのか、実在の人物なのか、実在ならば誰なのか、すべては謎。

しかも、明確にサザンプトン伯に捧げられた叙事詩2篇とは異なり、献呈の辞が曖昧で、Mr. W.H.に捧げる、と
記されているが、この人物が誰なのかは分かっていないなど、基本的に謎の多い作品となっている。


その他の 詩_____________________________________________

不死鳥と亀 The Phoenis and Turtle
女王陛下に捧ぐ To the Queen


シェイクスピア

ウィリアム・シェイクスピア
英国におけるシェイクスピア
作品(戯曲)
作品(詩)
歴史と背景(英国史概要とシェイクスピアの時代)
歴史と背景(シェイクスピアの劇団と劇場)(準備中)
名作紹介(映像化された作品)